【くららべーかりー】パンから繋がる人・街・企業・世界

幼少時代に食べて「美味しい」と記憶したものは、大人になってからも懐かしの味として、たまに無性に食べたくなる時がありませんか?

私は、再びその味に出会うまでに24年かかりました。
奇しくも、阪神淡路大震災から24年を迎える前日でした。

<Sponsered Link>

神戸市長田区にある「くららべーかりー」

今回訪れたのは、神戸市長田区にある「くららべーかりー」さんです。

さすが、パン屋さんは朝が早いということもあって、この日は9時ごろにお伺いしたのですが、すでにパンはすべて焼きあがっていました。

こちらのお店は、代表の石倉さんが障害を持つ人達と働けるようにと作られたお店です。石倉さんは、脱サラし、地元のパン屋さん(今はもうないそうです)に飛び込みで修行のお願いをして、パンの焼き方を習得されたそうです。

長年、お店でパンを焼かれていると、工場の空気中にもイースト菌が存在しているのか、年々おいしいパンが焼けるそうです。こちらのお店は1998年に移転されたそうなので、もう20年以上になりますね。見てるだけでも美味しそうなのがわかります♪

<Sponsered Link>

あの映画にも登場したお店

ところで、店内を見渡すと、「男はつらいよ」のポスターや山田洋次監督の写真、サインが目を惹きます。

それは何故かというと、「男はつらいよ」の第48作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」に出てくるパン屋さんのモデルがくららべーかりーだからです。
※作品写真は公式HPより

作品説明に記載されているとおり、この映画のラストは神戸の街、そして、この看板を掲げたお店も登場します。

撮影当時のお話等は、くららべーかりーのHPで紹介されているので、ぜひご覧ください。

さて、店内は1個ずつ丁寧に袋詰めされたパンが、少しずつお店に並び始めます。この日は、イベント用の発注もあったそうで、忙しそうでした。

私は、建物の2階に上がらせていただいて、お話を伺いました。
2階はスタッフの人たちの休憩スペースでもあり、くららベーカーリーに訪れる人たちの為のコミュニティスペースのような場所でもありました。

私自身、そこにお邪魔させていただいたのは初めてだったのに、何度も来ているかのような、アットホームな空間で、あっという間にお店にお伺いしてから3時間が経過していました。

<Sponsered Link>

企業から世界から注目される場所

お話を伺っていて、印象的だったのは、このパン工場に、地域の子どもたちだけではなく、企業の新入社員研修のメニューに組み込まれたり、海外からパン作りの体験&交流の機会があるということ。

最近、ダイバーシティという言葉が注目されていますが、まさにこれから、こういう環境って大事じゃないかなと思いました。

特に、企業の新人研修は、まず新しく社会人になった人が、障害を持つ人たちと同じ作業をすることで、相手への理解や思いやりの気持ちが絶対芽生えると思うんです。そして、そういう心をもった人たちが取り組む仕事って、きっと会社にとってもプラスの効果を与えてくれてるんじゃないかと思います。

パン工場のスタッフさんたちは、逆に研修に来た会社訪問をさせていただくことで、今度は障害を持った人も一般企業の見学という、社会見学をさせてもらえる機会ができ、何より研修のメンバーと再会できる喜びが一番大きいそうです。

さらには、相手企業さんを訪れる度にトイレやエレベーターをバリアフリー化してくれているところに感動すると、石倉さんがとてもうれしそうにお話してくださいました。

相手を知り、自分ができることを提供するマインドは素敵ですよね。
それを新人研修に取り入れた社長さんは素晴らしいと思います。

これからどんどん多様性を認め合える社会が必要になると思うので、「くららべーかりー」はひとつの成功しているモデルケースといっても過言じゃないと思いました。

ちょっと宣伝ぽくなりますが「MATY Worksの筆文字講座」でも、筆ペンを使って書き上げた作品を通じて、個人の多様性を認め合える社会作りを目指しています!

また、民間で障害のある人が活躍する場所があるのは、珍しいと思われている国もあるようで、海外からも見学やパン作り体験に来ることもあるそうです。

なんと、石倉さんご自身はカンボジアのコムラー村に学校を建設し、障がい児支援に取り組んでおられるそうで、その交流もあるそうです。

SROLANH PROJECT

恥ずかしながら、私は今回、石倉さんからお話を伺うまで、海外の障害を持つ子ども達のことを考えたことがありませんでした。日本よりもまだまだ発展していない土地で、障害を持ちながら生きる、育てるということは、本当に大変だと思います。そこに自らの経験を注力する石倉さんの思いとお人柄は、頭が下がるばかりです。

なかなか買えないパン

さて、せっかくパン屋さんに来たのだから♪
と、お話を伺って、帰る前にパンを購入して帰ろうと思ったら、お店のパンがすべてなくなっていました…(泣)

イベントや発注があると、くららべーかりーのお店自体の在庫はなくなってしまうことが多いそうです。

じゃぁ、どこでパンが買えるの?

と、お困りの方は「さくら」という事業所に行ってみるか、地域のイベントにくららべーかりーが出店している機会を狙ってみてください。
※半年に1回神戸市役所のお昼時間に販売する機会もあるそうですが、不定期です。

如何せん、1個ずつ手作りなので、大量生産ができません。
なので、販売数には限りがあります。

食パンも毎日ではなく、週2回の焼き上げだそうです。

◆さくらの場所

パンの種類や価格はくららべーかりーのHPをみてくださいね。
くららべーかりー/パンの紹介

別日に買いに行きました(笑)
あんぱんは家族が食べたので、それ以外のレビューを残します♪

食パンはそのままサンドイッチにもしましたが、焼いて食べるほうが個人的には好みでした♪1本買って帰って、自分の好きな厚さに切って食べる食パンが最高ーーー!

ラスクはサクサクで、砂糖の甘さの中にシナモンの香がして、お菓子にぴったり!

24年ぶりの味

私が今回「くららべーかりー」を訪れたのは、子供の頃に『こんなに美味しいパンがあるのか!』と衝撃を受けたパンが食べたかったからです。

いつかまた食べたいと、これまでの人生で何度か思い出しながらも、食べたいと思い出すタイミングと、買える機会に恵まれず今まで過ごしてきました。

その思い出の味が「プチ」です。

丸くてかわいいパンの間にはバターが挟まっています。
また、パンの上部には砂糖がついていて、口の中でパンとバターと砂糖が混ざった時のおいしさのハーモニーは、きっと初めて食べた子どもの私には贅沢な味だったのでしょう。

パンにバターを挟んで砂糖をつければいいと思いきや、これが不思議なことに「プチ」を食べた気持ちにはさせてくれない月日でした。

そこから24年。
ひと口目をよく噛み、飲み込んだ瞬間「そう。これ」と心の声が口に出ました。

きっと、懐かしの味ってそんなもんなんだと思います。
あの職人さんが作った…、あの形で…、あの味で…。
初めて食べた子どもの私と今の私が重なった瞬間でした。

そう考えると、今も石倉さんがご健在で、くららべーかりーも営業していることに感謝がつきません。

2019年1月17日で、神戸は阪神・淡路大震災から24年を迎えました。

「くららべーかりー」に向かう道中には、今も多くの空き地があります。
長い月日を経ても、こうして思い出の味と再会できた私は幸せものですね。

思い出の味をめぐるために訪れたお店は、震災復旧から、ダイバーシティまで考えさせられる奥が深い場所でした。そんな「くららべーかりー」は、今日もおいしいパンで働く人、食べる人を幸せにしてくれています。

くららべーかりーHP

タイトルとURLをコピーしました